10
大河の言ったとおりだった。
「ほら、次は、みっつだ。大河……」
竜児は大河の瞳の前に自分の右手かざす。中指に人差し指と薬指を寄り添わせる。
二本の指をきつく締めつけて、何度もイったばかりの大河の身体は、その揃えられた竜児の指を見ただけで反応してしまう。腰がおねだりをするように跳ねる。大河の言ったとおりだった。竜児に性器を拡げられて、その間に何度もイって、
「あっ、そんなっ、そんなっ」
大河は駄目になっていた。
「竜児っ……も、もう大丈夫、だからっ……きっと……竜児の、おちんちん、入れてっ……さ、さんぼん、なんて……っ」
「……っ! ……だめだよ、大河。これが終わったら、ハメてあげるからね」
大河の言葉に反応した股間の激しい疼きに耐えながら、荒くなった呼吸を整えて、竜児は努めてあやすように言った。喘ぐために閉じることを忘れた、大河の薄い花びらのような口もとから白い顎へと、しどけなく垂れた朝露のような涎を、竜児は舐めとってやりたくてたまらなくなる。
今や大河に比べて自分にどれほどの理性が残っているのかも、竜児には正直疑わしい。ただ大河を傷つけないこと、それが今や竜児の理性のすべてだった。大河の痛みは、もう随分と前から竜児の痛みになっていた。育てたその感覚だけが最後の理性だった。
挿入する指をひとつずつ増やし、大河に締めつけさせながら、少しずつ奥へと進めていく。指の付け根まで入れて、大河に絶頂させて、その太さに馴染ませる。上手くやれているのだろうか。痛みも、怖れていた出血も、これまでのところはないようだった。
竜児は自分の三本の指を口に含んで唾液をからませる。そしてそれを、確認をとるように大河のちいさな口に含ませる。観念したように瞳を閉じて、頬を上気させて大河は竜児の指に甘やかな舌をからめる。そのちいさな舌を少しつまんで、愛撫してやる。
喘いで大河は、またもう少し駄目になる。
竜児は横になった大河の傍らに跪いていた。ここからはすべてが見渡せる。淡色の髪雲に浮かぶ大河の顔や華奢な肩も、薄くうすく仕立てたプリンのようなちいさな乳房も、くびれてしなやかな腰も、雫の形をしたヘソを持つなめらかな腹筋も、はっきりと肌を突き上げている腰骨も、そして。
淡く茂った恥丘の下で、濡れて艶めきひっそりと息づく大河の秘唇も。
小柄な大河にあわせて、それもまたちいさいのだった。それは竜児の小指ほどしかない。まだミルク色のぽってりとした肉に挟まれているそれを、竜児は左手で少し拡げる。
ひっ、と、大河がのどを鳴らす。
それは大河の舌の色に似た桜色。丘の茂みが割れてそこから続く大河のクリトリスを隠した鞘から、肉厚の花びらのようなちいさな陰唇が二手に分かれ、息づくおしっこの穴と、そして、竜児の指に何度も犯されてわずかに開いた、白い蜜をたたえた大河の肉の穴を、囲んで消えるように結ばれている。
見れば、すぐにハメたくてたまらなくなる。
髪の付け根がチリチリとするのを竜児は感じる。目をつぶって頭を振り、それを振り払う。
大河の恥丘が跳ねないように竜児は左手で押さえる。揃えた指を白蜜の泉にあてがう。覚えた方向にゆっくりと突き入れる。狭くて熱く、きつい穴。
「はあ……っ!」
揃えた指を束ねるように、大河はさらにきつく締めつけてくる。
「息を吐いて、大河。力を抜いて……」
締めつけがわずかにゆるむタイミングを狙って、竜児はさらに指を奥へ沈めていく。
「あっ! あっ!」
大河が驚いたような、甘やかな声をあげる。竜児の腹の芯がそれに応えて甘く疼く。もう俺も駄目なのだと、竜児は思う。すっかり中毒だ、俺は。
ふたつ目の関節まで揃えた指を大河にうずめてから、竜児は恥丘を押さえた左手をはずして、右の手のひらにスイッチする。指の付け根を曲げて、挿し入れた指と手のひらで恥丘を掴むようにしてはさむ。
「あーっ!」
もう知っている。大河はこれが好きなのだ。
ここから先、三本の指の付け根までは急に太くなる。それはほとんど竜児の男根の太さに近い。だからここからは、ゆっくりと馴染ませなければならない。大河の股間を掴んで固めたので、もう見なくても進めることができる。
竜児は上体を倒して大河に寄り添うようにする。髪を踏まないように左ひじをつき、大河の頭を左腕でかき抱く。親を見つけた迷子のように驚いた顔をして、大河は竜児を見上げてくる。
「ほら、入ったよ……指、みっつ。痛くないか? 大河」
「そんな……っ。痛くない……痛くないの……っ!」
「そうか、よかった」
竜児は微笑む。気持ちいいか、などと、辱めるような訊き方をする必要はもう無かった。
竜児は指先を鉤のようにして、大河のクリトリスの裏の奥のあたりを、ぐっ、ぐっ、と押してやる。
「大河はこうされるのが好きなんだもんな」
「あうっ! あうっ! な、なんでわかるの……っ!」
「おまえが教えてくれたんじゃないか」
「教えてないもん……っ! あーっ! そこっ、すごいの……っ!」
「ほら、そうやって、教えてくれたんじゃないか」
わかって、大河はくやしそうに口を結んで、竜児を睨みつける。
おう、望むところだ、と、竜児も大河を見つめ返す。
「ぜんぶ覚えてやるからな、おまえが可愛い声、出すところ。おまえの気持ちいいところ、見つけて、ぜんぶ覚えてやる。すぐに、誰よりも、おまえを上手に可愛がれるようになる。この世で一番、誰よりもだ。俺はおまえを上手に可愛がれるようになりたいんだ、大河。おまえの上手にさえ、俺はなれればいい。おまえの上手に、俺はなりたいんだよ」
揺らめく視界の中、竜児を睨みつける瞳から、大河は急に涙をポロポロとこぼし出した。
ポロポロ……ボロボロ……どぼどぼ……どぼぼぼぼぼぼぼぼ……!
「た、大河……?」
「うぐぐ……おのれ……私を泣かせて……ひっく……そんなに、ひっく、楽しいのか……?」
「いや、まて、俺はそんな、泣かせるつもりで言ったんじゃ」
「どぅわ……っ!」
「どぅ、どぅわ?」
「うぐ……どぅ、どぁ、どぁ、どあっ! だ! だ! だ!」
大河は 発声練習を 始めた!
「よし、だ、だな? だ、だ! わかるぞ大河! だの次はなんだ?」
「だ! よっしゃあ!」
「おう!」
「黙れっ!」
「おう……っ」
発声練習しているうちに大河、大復活であった。ぜんぜん、駄目になんかなってない。
「ふーっ……いい、竜児、あんたはね」
いつしか泣き止んでいた大河は、息を整え、涙で睫毛もぐしゃぐしゃの瞳で竜児をあらためて睨みつける。
「もう、一番なの」
「……え?」
「え、じゃないっ。竜児はもう一番なの! そうに決まってるの!」
「一番って……おまえを可愛がるのの、か?」
「そうよ……ほかに何があるっていうのよっ!」
叫んで、大河は竜児の首根っこをつかまえて抱きついてくる。
「だって私、変な子だもん! 変なことばっかりするし、変なことばっかり起きるし。今だって、なにしてんだろ、って……」
その今、っていうのは……と竜児は一応、確かめずにいられない。今と言ってもいろいろあるのだ、竜児の右手の行き先、とか、そもそもこの、いわゆる「えっちの練習」全体、とか。その今、っていうのは……
「……発声練習、のことか?」
大河はコクコクとうなずく。
「……竜児、だけだもん。最初から、変なことする私、受け止めてくれたの、竜児だけだもん。ずっと受け止め続けてくれたの、竜児だけだもん」
「大河……」
まあ、たしかに最初におまえの木刀を真剣白刃取りして受け止めたけどな……なんて、竜児はつい思ってしまったけれど、もちろんそんなことは言いはしない。
変なこと、という言葉に、大河はたくさんの意味を――たぶん、竜児に見せてくれた大河のすべてを込めて使っていた。だから、受け止める、という言葉もまた、そういう意味で――竜児が大河にしてあげられたすべてという意味で、使っているのだろう。それがわかるから、竜児は黙って大河の続く言葉を待つ。
「別に私のこと、好きじゃないのに。たいした得もないのに。それなのに竜児は私のこと、最初からぜんぶ受け止めてくれた……ずっと……そんなの、そんなの、って……」
好きになるに決まってるじゃない……大河の最後の言葉は消え入りそうな声。竜児の首筋に額をくっつけたまま、大河はきっと、表情を隠そうとしている。
「大河……」
「竜児、って、ひどいよね」
ここに来てなんと真逆の評価であった。
「ひ、ひどい?」
「うん、ひどい。竜児はひどいの。ひどい顔してる……」
ここに来て顔か――――!? さっきなんか褒めてくれてたのに、と竜児は愕然。罵られるのはやっぱりこの目か? 目を狙うのか?!
しかし大河が責めてきたことは、竜児の思いもよらないことだった。
「ひどい顔して、ひどい女たらし。天然ジゴロ、大橋高校のドンファン、歌舞伎町のホストも真っ青。他に……本命、いるのに、傍にいるってだけで、私を誘惑しまくって。しかもその気もないの。私のために恥かいて、私のために怪我して、嘘ついて、笑ってくれて、闘ってくれて、逃げてくれて……美味しいチャーハンつくってくれて、優しく慰めてくれて、いつも一緒にいてくれて……私、もう、きっと、その時、落ちてた……」
「大河……」
「私、もう落ちてるのに……竜児ったら、ずっと傍にいる、なんて、将来のことまで……追い撃ちかけるんだもん。虎と竜は並び立つものだ、なんて、わけわかんないこと……運命みたいなこと、かっこいいこと、言っちゃって。……名前、呼んでくれたの。大河、って……だから、嫌いだった名前まで、好きになっちゃう……」
大河は竜児の首筋に、猫みたいに頭をこすりつける。
「でも、それなのに。竜児が好きなひとは私じゃないの」
私じゃなかったの……苦しげに声をくぐもらせる。大河の肩が震えだす。呻いて、呻いて、竜児の胸元に落ちる大河の涙は、蝋のように熱かった。
竜児は慌てる。心にも甘い告白だと感じて聴いていた俺はなんて馬鹿なんだと思う。馬鹿で、犬で、ひどくて、ひどい。大河の罵るとおりだった。反省に似た自虐の淵が竜児をさらおうとする。竜児をさらおうとするのは、もう一人の竜児なのだった。ではそいつは何から俺を奪い去ろうとしている? 見失う前にその名を叫べ!
「大河」
そうだ、大河からだ。古い蛇のようなもう一人の俺は、いつもこんな時に大河から俺を奪おうとする。大河のことを思わせるようなふりをして自分のことを思わせる。大河を大事にさせるふりをして自分を大事にさせる。そうしてそんな時こそ俺が――ほかでもない俺が大河を傷つける。
なんてこったと、竜児は気づいた。俺は世界から大河を守るなどと、猛り立つ血も心地よく誓った。それが敵のすべてだと思っていた。時に俺自身が、大河と俺の敵になる、そんなことがあることを忘れていた。もう一人の俺、俺しか愛さない俺こそが、大河とともにありたい俺の最小にして最大の敵なのだ。まただ。見失うな、愛する者の名を叫べ!
「大河……」
何か言えることがあるはずだ。泣いて苦しんでいる大河にかける言葉が。
だけど、何を言ったらいい? 俺が他のひとにも恋をしていたのは事実で、大河が苦しんだのは過去で、それはやっぱり変わらないのだ。だから今でも大河は苦しんでいる。それに何が言える? まだ何も、ひとつも、かけるべき言葉が見つかっていないじゃないか。
黙れ、蛇!
「大河っ!」
竜児は大河の顔を上げさせる。桃色の頬に幾筋もの涙の跡、しかしそのわりには
「なに?」
大河は声もしっかり、大きな瞳もぱっちり、きょとんとした顔で竜児を見上げている。
あれえ? と竜児は思う。大河の表情はまったく想像と違っていた。なんかもっと、こう、苦しいの、切ないの、みたいな……のかと、備えていたのに。それで竜児は、愛してる! なんて、せめてそれだけでも伝えよう、なんて思っていたのに。
予想がはずれて、竜児の受け答えもぐっと間抜けになる。
「いや、なに、って、おまえ」
「あ。さっきの話? さっきの話はおしまい」
「え?」
「だってちょー長くなるんだもん。一晩あっても足りないわよ。やめやめ。あー泣いた泣いた。気持ちよかった。たまにはがっつり泣くのもいいよね、竜児!」
「お、おう」
竜児は苦笑していた。大河の明るい笑顔に、さっきまでのことはもうどうでもよくなっていた。大河は、たしかに変な女だった。たいていこんな風に、予想もしない奇妙なやり方で、大河は竜児を救ってくれるのだ。だからいっそう、愛しくなるのだけれど。
「それにね、さっきの竜児の極道ジゴロ話。なんだかんだでハッピーエンドなんだ」
そう言って、大河は薔薇の唇をむにゅむにゅと波に結んで、上目遣いにはにかんで見せる。
えへへ、聞きたい? 聞きたいでしょ? 聞きたいよね!……なんて、いつもどおり勝手に決めつけて、大河はエヘンと咳払い、あらたまった口調で、
「最後はこうなの……『ひどい女たらしの竜児は、結局、私を選んだのです。竜児は大河のものになりましたとさ』」
めでたしめでたし、なんて言う。
「おう!」
「竜児は私のものだもーんっ」
だからいいんだもーん……なんて、瞳も閉じて澄ました顔で大河は歌うように言う。
「おう、俺はおまえのもんだぞ、大河」
ぼんっ、という音が聞こえたような気がする。大河の顔が真っ赤になった。なにやら小鼻もふくらませてふがふがと大興奮。
「……とととところがこの物語には続編があるのです!」
「おうっ?」
「竜児はただのひどい女たらしなだけでなく、なんとひどいスケベでもあったのです」
「スケベって、おまえね……」
「竜児は大河を手込めにしようと、虎視眈々と狙っていたのでした。まあやらしい」
「虎視眈々って……てか虎はおまえじゃねえか」
「竜児はひどい童貞でもあったのです」
「無視すんな! てかおまえがひどいっ」
「竜児は童貞なのに……えっちがとても上手で、大河は可愛がられて……いっぱいイきました……」
「……」
大河は伏せた目蓋も薄紅色に、竜児は合いの手も入れられない。
「しかも竜児は、おっきなおちんちんを大河にハメようと、大河の、を、指で拡げようとするのです……」
竜児の指を、大河がきゅっと締めつけてくる。
「なぜなら大河は竜児のものだからなのです……」
「……ああ、おまえは俺のものだ、大河」
瞳を閉じて、大河はぶるぶるっと震える。竜児の手の中で股間を跳ねさせる。竜児の指を、痛いほど締めつける。
はあっ、と一息大きく吐いて。大河は長い睫毛も美しく、うっすらと目を伏せる。
「……大河はすっかり手込めにされてしまいました。竜児とつながりたくてたまらなくなるように、仕込まれてしまったのです……あやうし、大河。今に至る。……ね、竜児」
つづけて……と、懇願する大河は、もう竜児に顔も向けられない。
「……おう」
竜児は微笑んで、届く大河の額にキスをしてやる。そして、右手の指を……
指、を?
「……どうしたの? 竜児。いいよ、続けて……?」
「ああ、いや、なんていうか。もう、ぜんぶ入ってるみたいだ」
「ぜ、ぜんぶ?」
「そう、ぜんぶ。三本とも、指の付け根まで」
「え……うそ、三本とも、って」
大河の頭の上から、こんな感じの、と、竜児は左手の指を三本、揃えて見せる。大河は寄り目で確認。
「うそ、そんなの……」
想像しちゃった様子の大河はまたもぶるぶるっと。竜児の指をぎゅうぎゅう締め付けて。反射なのか内もももぴっちり閉じてしまって、竜児の手を股間でぎゅうっと。
待て大河、何をしたい? そんなふうにしたら、ますます。
「あうっ! ふ、深い……っ!」
そりゃそうだ。そりゃそうなる。
なんだかよくわからないが竜児も観念した。ゆっくり馴染ませながらここまで指を深く沈めるつもりだったが、いつのまにかそうなっていたということで、つまりはショートカット。挿入した指で大河の好きな裏のところを押してやる。
「あーっ! そ、それするの……っ?」
「するよ、大河。イってぎゅって締めろ。太さに馴染ませるんだ」
「そ、そんな、もう、いいじゃない……っ? ね、りゅうじ……っ、も、もう拡がった、よ? 私の、もう、拡がったの……っ! そこっ! そこっ!」
「駄目だよ、俺のはもうちょっと太いんだから」
「えーっ! も、もっと太いの……っ!? そ、そんなの……指で、こ、こんなに……こんなにっ! すごいっ! すごい……のにっ! 私……っ!」
竜児は左手で大河の手をとって、自分の股間に導いてやる。大河は竜児の滾ったものを握り締める。大河の手はやっぱり特別で、握られたところにきつい快感が爆ぜて、竜児は呻き、吐息せずにはおれない。
「ふ、太い、竜児の、太い……おっきい……心臓みたいに、どくどくして……っ」
「そう、だよ、大河……イったら、これ、ハメてやるから……」
応えて大河の股間が跳ねて、竜児の手を突き上げる。竜児の指をきつく締めつけて、
「あーっ!」
それは大河にも快感をもたらすようで、ひときわ甘い声をあげる。竜児は大河の穴を指でくじりながら、大河の淡色の髪に鼻をうずめて、ちいさな耳元で命令するように囁く。
「さあ、大河、イくんだ。イっちゃえ、イけ」
「ひっ、ひど……っ! そ、そんな……あっ! あーっ! おかし、い……わ、私、イっちゃう、の……りゅうじ、にっ……命令されて、イく娘に、なっちゃ……うっ!」
足を上げて空を掻き、腰弓をぐっとそらして浮かせ、大河はぎゅっと瞳をつぶって、
「っく! っく!」
絶頂する。
足指の先をシーツに突き立てるように下ろし、一息に腹筋をしめて丸まるようにして股間を突き上げる。淡色の髪が揺れて、甘やかな大河の匂いも色濃く立ち上る。汗が玉となって散る。恥丘を突き上げるたびに二度、三度、おしっこを噴出して、竜児の手の中を熱く濡らす。
大河の膣は搾るように断続的に竜児の指を締めつけ続ける。それは挿入された男性器から精液を搾り取るための反射。いやらしい、動物の穴だった。指を搾られながら竜児は期待を禁じることができない。大河のこの熱くてきつい穴に、イくと締まるいやらしい穴に、この後、俺はこれをハメることができるのだ。期待に股間は驚くほど漲り、大河の手の中で跳ねようとするのを止められはしない。竜児のそこもまた、動物のものなのだった。
「り、りゅう、じ……っ」
痙攣に抗って、大河が竜児を呼ぶ。揺れる瞳、震える唇で呼びかけてくる。
「お、おねが、い……が……ある、の……っ」
「なんだ、大河」
竜児は優しい声を出す。なんだって叶えてやる、と思う。おまえの、大河の願いなら。
だけどその、大河の願い、とは――
「おね、がい、りゅ、りゅうじ……っ。は、はじめて、は……なに、も……つけ、ないで……して……っ!」
(この章おわり、11章につづく)
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