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本館SANDWORKS Lab.のSS活動用分館■とらドラ!の大河×竜児SSなど。甘々コメディとラブエロとがあるので注意■本館には右下のリンクからどうぞ
23 . November
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17 . July
 大河が死ぬ夢を見ました。ベッドの上で大河はシーツに携帯を放って、事切れていくのです。たったひとりで。裸で。髪がショートでした(u ・ω・)それ大河じゃないんじゃね? せーぶるです

それはそうと今日はガス欠のようです。ひどくやる気が起きません。SSを書き出してひと月と半ば、ついに力尽きたか……ってこれからコミケだっての! あんた本出すんでしょ!? なに甘えたこと言ってんだこの馬鹿犬! た、大河……? いや、でも、ちょっと俺、病院行ってくるわ……てか病院が来い(u ・ω・)

激ダルでも更新は出来ます。書き駄目、じゃない、書き溜めがあるんだもーん。

というわけで「竜虎並び寝る」 12章、続きからどうそ。ラブエロ注意
てかさ、マジでこれ、読んでるひといるの……? ここで。

   12
 
「うっふ~ん」
「……」
「あっは~ん……」
「……」
「りゅ~うじぃいいいいん……どう、上手くいった?」
「……いや、だめだ。これもう使えねえな……」
 がっくりと竜児は肩を落とす。ついでといってはなんだが股間の手乗り竜児もしょんぼりしている。そんな竜児の手には裏も表も無くぐにょぐにょと丸まって使えなくなったコンドーム。これで2個目であった。
 ゴムなんて当然のごとく今まで一度も着けたことなどない絶賛童貞中の竜児である。
 ゴム着きで挿入して良い――大河の許しをついに得て、竜児はドキドキワクワク、意気揚々と、装着すべく箱を開け、はやる気持ちを抑えながらしっかり説明書を読んだ。それでもその時までは股間のミニ竜児だって意気揚々としていたのである。ところが。
 袋を切ってゴムを手に取り、竜児がいざ勃起した自分のモノへと乗せてかぶせようとすると、なんだか上手くいかないのだった。上手く着けられないから萎えるのか、萎えるから上手く着けられないのか、とにかくと焦れば焦るほど、萎えてしまって失敗する。後に残るゼリーでべたべたするゴムの情けない残骸がまた、おのれ自身のさまを思わせて、竜児にはひときわ物悲しい。
 そこで「よし、私もひと肌脱ぐわ!」と協力を申し出たのは、ひと肌も脱ぐものとてないまっぱの恋人、大河であった。「私の性的魅力であんたのおちんちんを勃起させ続けてあげる! それはもうビンビンにね!」と、恋人の口から聞くにはいささかキツい表現ではあったが、それでもそんな大河の気持ちに竜児は素直に感動していた。「おう、頼んだぞ!」なんて、竜児も元気に応えたのだった。
 そして、その結果が、さっきの「うふ~んあは~ん」なのだった。棒読みではないにせよ、そんな如何ともしがたく紋切り型のヨガリ声を上げながら、竜児の前で大河がとるポーズもまた、どこかのギャグマンガにでも出てきそうな紋切り型のセクシーポーズ。この上さらに大河の性知識の仕入先まで心配することになった竜児である。
 こいつのする「協力」ってそういえばそんなだったな……と、お互いに別の恋を応援しあっていたあの頃の大河クオリティを思い出す竜児は感慨もひとしおだが、そんな感慨では当然、勃起しないのである。今や大河と相思相愛、大河にメロメロ(つられて紋切り型)の竜児だから、やばいエロ人形みたいになっている大河を見ても、こいつすごく可愛い、くらいは思う。写メで仮撮りしまくりデジカメで永久保存したいとも思う。思うが、それもやっぱり勃起の方向からはななめにズレているのだった。
「……なあ、大河。協力してもらっているところ悪いんだが、せめてその『うふ~んあは~ん』だけでもなんとかならないか?」
「なによ。私にこんな恥ずかしいことさせといて、その上注文するって言うの? あんた何様のつもり? 婚約者? 恋人? 私のご主人様?」
「おう……『様』はともかく、だいたいそこらへんではあるようだぞ」
「ちっ……どうすればいいわけ」
「本当にありがたいと思ってるんだ、大河。だからそうヘソを曲げるなよ……なんていうか、いつものおまえの可愛い声でいいんだが」
 竜児の言った「可愛い」の言葉に律儀にふるふるして、でも大河は不服そうに言い張る。
「じゃあさっきのでいいんじゃない」
「おまえは『うふ~んあは~ん』なんて言ってなかったぞ……?」
「そんなこと言われたって、よくわかんないもん」
 言って、大河は薔薇色の唇をつんと蕾にとんがらせる。
 そういうもんなのか……と竜児はひと思案して、
「おいで、大河」
 優しく声を落として、手をさしのべる。
 なにやら大河は急に頬を上気させて、唇は蕾からむにゅむにゅと波形に、照れたように瞳も伏せてしまう。ああ、この顔なんだよな……と竜児は思う。
 片手で胸を隠しながらにじにじと膝歩きしてきた大河を、竜児はその大河の熱い両腋に手を差し入れ、ひょいとお人形のように持ち上げて、あぐらをかいた自分の膝に横座りさせる。ちいさな尻まで隠すほど長い大河の淡色の髪が、竜児の太ももをふわふわと撫でて心地よくくすぐる。
 いったいなにがそんなに嬉しいのか、さっきまでのお冠はどこへやら、大河は頭を竜児の首もとに、ごんすりすり……と頭突きアンド擦りつけの猫コンボで懐いてくる。もちろん竜児だって嬉しいのだが。
「大河、ちょっといいか?」
 言って、竜児は手ブラをしている大河の細い腕をそっと掴む。見上げてくる大河の、長い睫毛に縁取られた、鳶色がかった煌く瞳を、竜児は夕空に向ければカラスをぼとぼと落とせそうな禍々しい眼光で眺める。優しく見つめ返しているのだ。もちろんそれは大河も知っているはずで、コクンとうなずき、
「あんまり見ないでよね……」
 そう言って大河は、胸を隠す腕を解く。薄く可愛くふくらんだ、ミルク色の胸があらわになる。竜児は大河の華奢というにも細い腰を抱き寄せて、反らせたその胸に顔を寄せる。予感に震える大河の、つんと上を向いた桜色の乳先をそっと唇に含む。
「あっ」
 竜児は胸から顔を離して、大河の顔を見て言う。
「その声だよ、大河」
「えっ……よく聞いてなかった、から……もう一回……」
 竜児は微笑んで。
 ちゅっ。
「あっ!」
 ふたたび、腰を跳ねさせる大河の顔をうかがう。
「お、覚えるから……もう一回……」
 ちゅっ、ちゅっ。
「あっ! あっ! りゅうじ……っ」
「その声……その顔だ。可愛いよ、大河……覚えたか?」
「……も、もうちょっと練習するから……もうちょっと……」
「……おまえわざとやってるだろ」
「ん……えへへ」
 途中からおねだりしていた大河はバツの悪そうに舌をぺろっと出して照れ笑いするが、
「あっ、竜児!」
 と、竜児の股間を指さすや、ぴょんと竜児の膝から跳び降りて、
「わーい、勃った勃った! 竜児が勃った!」
 にわかにお下劣なアルプスの少女・大河になっていた。
「さ、竜児、早く!」
「おう!」
 はしゃぐ大河にうながされ、竜児はこれが最後と三つ目の袋を開けて、ゴムを装着しようとする。
 ああ、だが、しかし。
 先端に載せて、輪のように丸めてあるゴムの端を竿に沿って降ろそうと焦るほどに。
 膝をそろえて屈み、わくわくと覗き込む大河の目の前で。
 しくじって、やがて竜児の男根は硬さを失い。
 しおしおと、おちんちん形態に。
 オゥマイガッ……。
 ジーズ……。
 シッ……。
「……」
 がっくりと竜児は肩を落とす。振り出しに戻っていた。
 振り出しどころか、箱に入っていた最後のゴムが死んでいた。
 終わり、なのだった。
「竜児……」
 首も折れよと俯いた竜児の顔を、下から覗き込んでくる大河の、心配そうなツラがまたこたえる。まだ失望や軽蔑を向けられる方がマシだった。何も面白いものなどないのに、細かく吐くように竜児は笑っていた。
「はは……いいんだぞ、大河。罵ってくれて。いつもみたいに、言ってくれよ。このグズ、ノロマ、不器用……不器用……はは、おまえはすごいや。俺なんにも思いつかねえ……」
 竜児の顔は正真正銘、ひどい顔であった。歯を軋るほどに噛み締めた唇は引き攣れ、涙をこらえて凶眼はゆがみ、星の断末魔にも似た滅茶苦茶な光を四方八方へと放つ。一人の男の思いが遂げられなかったのなら、全世界はそれに対して涙すべきだ、そしてこれ以降の歴史において一切の詩を歌うことは野蛮である……なにがなんだかよくわからないが、ものすごくそんな感じだ。
「竜児、泣かないで……」
「大河……な、泣かねえ。泣かねえぞ畜生……俺は幸せなんだ、おまえがいるから。最高の、幸せ者なんだ、俺は。泣くわけがねえ。決めたんだ、俺は。これから先、あとは、もう、おまえのためにしか泣かねえ、って。……でも、畜生……最後だった。最後を駄目にした、俺は。俺が、駄目に」
「最後……?」
「最後の、ゴムだった……駄目にした。大河……」
 もう限界だった。両手で顔を覆う前に、せめてひと目と竜児は揺らめく視界に大好きな大河を捕らえて、
「大河、俺、おまえとつながりたかったよお……っ!」
 はらわたを搾るようにして言った。そして顔を覆おうと、竜児は手を持ち上げようとするのに、手は震えて、どこまでも馬鹿にするように不器用になって、満足に持ち上がりもしないのだ。
「最後じゃないよ、竜児……」
 大河はそう言ってくれる。また今度がある、そういうことだろうか。もちろんそうだ。また今度がある。しかし愛しい女のその約束すらも、とてもすぐには慰めになりそうもなかった。
 また今度はある、だがそれは今夜ではない。
 それが我慢ならないほどに、自分を追い詰めてしまった自分を竜児は感じていた。その時。
 大河はその、震える竜児の手の上に、白くてちいさな両の手をのせるようにして。
 だけど、その大河の両手のひらは上を向いていて。
 そこには、箱が――ゴムの箱が、二つ、も?
「ほら、竜児。まだあるよ? まだ、いっぱい」
 綺麗な顔を子どものようにあどけなくして、大河は教えてくれた。
「あ、ある……のか?」
 うんうん、と大河はうなずく。
「あのね、いっぱい買っておいたの。棚にあるだけぜんぶ買ったの。竜児が失敗するなんて考えてなかったけど。念のため……でもなくて。ていうかなにも考えてなかったの。いっぱいいっぱい買わなきゃ、って、それだけしか覚えてない」
「そうか……そうか……そうかあ……」
 そればかり繰り返して、竜児はもう、鼻と口からゆるゆると息を吐くばかり。
「ごめんね。意地悪するつもりなんてなかったの。竜児がどうしてそんなに落ち込んでるのかわかんなくって。最後、って言うの聞いて、ようやくわかったの。……えっと、私どうしたらよかっ」
 言葉尻ごと、竜児は大河を抱きしめていた。
「よかった……よかったああああああああ……っっっ!」
 大河のつむじに頬を寄せて、安堵の息をこれでもかと吐きかける。唐突に掻き抱かれた大河は戸惑って。
「お、おこってない?」
「怒るもなにも……もう、おまえ……っ。よかった……うああ、すげえよかった……」
 助かった、助かった……竜児は馬鹿みたいに繰り返す。
「助かった……?」
「そーうだよ、助かった……大河……でかした……おまえ最高だ……」
 安堵のあまり息切れしながら竜児は言葉を吐き出していた。
 望みがつながった。今夜、大河とつながるという望みが。エロガキと呼びたければ呼べ。発情しやがってと罵りたければ罵れ。セックスしたいだけだろうと嘲るなら嘲れ――そう竜児は思う。
 ただつながりたいという思いだけで、竜児と大河はここまで来たのだった。それだけはふたりで見失わないようにして、眠れば消え去る一夜を長く引き伸ばして、初めて得た熱く儚い炎を絶やさぬように、炎を手と手で覆い守るようにして、ふたりはここまで来たのだ。
 涙の雨にも負けず、悲しみの風にも負けず、シラケの雪にも混乱の狂熱にも負けないよう、何度も互いのカラダに火をともし、欲しがり、怒りも微笑みに変えて、ふたりでここまで来たのだ。生半可な欲望なら、未熟なふたりがいつ転げ落ちてもおかしくはなかった狭い谷だった。ふたりが育ててきた互いへの想いが、心に刻んだ永遠の誓いが、支えてくれていなければ消えてしまう杣道をたどって、ふたりはここまで来たのだった。
 心に刻んだ永遠の誓いを、身体にも刻むために。なぜなら。
 なぜなら――
「竜児……」
 竜児の心を呼び止める声がした。
 暗がりに差すひとすじの日の光に咲いた花のように、大河の顔がそこにあった。竜児が自分に気づいたことを喜ぶように微笑んで。そして大河は薔薇色の唇を寄せて、
「大河……」
 竜児の左目の目蓋に、右目の目蓋に、キスをする。お返しよ……なんて言って、少し驚いている竜児にまた笑いかける。幸せそうに、目を細める。はたして、
「……ありがとうね、竜児。私、幸せだ……」
 そう、大河は言うのだ。言って、目蓋を伏せて、薄紅に染めた頬に長い睫毛の影を落とす。
「ふたりとも初めてなんて、どうなるんだろうって思ってた。もっと滅茶苦茶で、慌てて、少し乱暴にされて、痛くて、気まずくて……でもそれでもいいのって……相手が竜児だから、それでもいいことなんだって……好きなんだから我慢しなくちゃ、って……そんな感じかもって、思ってた」
 そこで大河は言葉を区切って、言葉を捜すようにして。伏せた大きな瞳が見つけたのは、言葉ではなくて、竜児の手。
 大河はその、竜児の手をとって、大切なもののようにそっとキスをする。愛しそうに、頬を寄せる。
「竜児の手……お料理してくれる手……お裁縫、してくれる手。髪を梳いてくれる手。頭を撫でてくれて、手を握ってくれる手……私を、抱きしめてくれる手。優しい、手……私のことを知ってくれてる、優しい手……」
 そして大河の身体が気づいたように震える。
「……びっくり、しちゃった。ちっとも乱暴じゃなくて、少しも痛くなくて……いっぱい撫でられて、頭がぼうって、なっちゃう。竜児ったら、めちゃくちゃ緊張してるくせに……私のこと一生懸命、可愛がってくれて……口も……」
「口?」
 問い返す、まさにその竜児の口もとを、上目遣いに大河は見つめる。
「ん……そう。その口も……竜児の口も、大好き。素敵なこと、いっぱい言ってくれるの……びっくりするくらい」
「……俺、なんか、素敵なことなんて言ったか?」
 聞いて大河は、こらえきれず、ぷっと吹き出す。クスクスと笑う。なんとか笑いを飲み込んで、はー……と一息をつける。
「あんたって……ヤバイね、竜児は。これからは気をつけさせないと、この女こましさんには」
「スケコマシって、おまえね……俺がモテない奴だってことくらい、おまえなら十二分に知ってるだろうに」
「……ま、そういうことにしといた方がいいか」
 ふたたび吹き出しそうになるのをこらえるように顎をしゃくって、かわりに大河は不敵な笑みを竜児に向ける。
 まだ何か言い返そうとして息で胸を張らせた竜児は、けれど口を噤み、目も伏せて胸も落として、あきらめたように呟くしかない。
「仕方ねえ……おまえのそんな意地悪そうなツラだって、もう俺は気に入っちまってる」
 大河の口もとから笑みが消えて、入れ替わるように頬の白に朱が混じる。瞑想するように瞳を閉じるや、ぶつぶつと呟いて、
「……やばい、ほんとにやばい、やばいやばいわこいつ、早くなんとかしないと……ええいっ、とにかく!」
 いきなり大河はくわっと瞳を見開く。
「竜児、私は幸せよ!」
「おう! 俺もだ、大河!」
「さあつながりましょう! 竜児!」
「おう! つなが……つなが、って……いや、つながりたいんだが、これじゃあ……」
「大丈夫! 一生懸命ゴムをつけようとして連続失敗するあんたも素敵よ!」
「おう、そうか!……そうかあ?」
「そうなの。さあ、がんばってゴムつけよう! 私も協力するから!」
「おうっ、またやってくれるのか!?」
「あったりまえじゃないっ!」
 竜児は感激していた。とてもことに及ぼうとしている男女の会話とは思えない勇ましさだったが、それでも感激したのだ。
 行為を始め出したころとは違って、もはや中断はないと信じて、怖れてはいなかった竜児だが、男がこんな情けない事態に陥っても白けることなくノリノリで臨んで来てくれる女、大河の不屈の気概が、ありがたくて嬉しくてならない。やっぱり大河も俺と心を同じくしてくれていたんだと再確認。俺たちゃ同志だ、一心同体だ、なんて感動する。
「よし! じゃあ頼んだぞ、大河!」
「まっかせとき!」
 そう言って大河は、やおらむんずと竜児のふにゃちんを掴んだ。
 驚きすぎて凶眼も白黒させ、声もあげられない竜児を一顧だにせず、大河は残る片手で頬にかかる前髪を押さえ、口をあーんとめいっぱい拡げて――
 食われる!?
 逃れようと身をよじる竜児の自己防衛の本能よりも、大河の猛獣としての本能の方がやっぱりどうにも速かった。声が出るのも遅すぎた。大河は竜児のふにゃちんを、
「ひっ!?」
 ぱくっ、と。
 予想外、であった。てっきり竜児は、大河はまた「うふ~ん、あは~ん」の改良版で協力してくれるつもりだとばかり思っていたのだ。ちっとも一心同体なんかではなかった。いや、咥えられているから同体ではあるかもしれないが、むしろ二心なのだった。だが、しかし。
 痛みはなかった。最初の恐怖の時も過ぎ去って、よくよく下半身の感覚を確認すれば、大河はちゃんと歯も立てず、ただ竜児のを口に含んだだけなのだった。大河の口のなかは暖かくて、ぬちゅぬちゅと濡れた感じがして、驚いたからかまだ勃起前だからか、鋭い快感こそないが、不快なわけではもちろんない。そこだけをぬるいお風呂につけたらこんな具合だろうか、なんてつい竜児は思ってしまう。
 ともあれ大河を信じたいものの、一抹の恐怖というか不安を拭い去れない竜児は、あぐらをかいたおのれの股間の上に大河のふわふわの髪が生えて豊かに広がっているという、地球大紀行ばりの神秘の光景を眼下にしながら、神秘の根源たる大河のつむじに向かって、一応言っておくことにする。
「い、痛くするなよ……あと無理もするな」
 お約束、であった。
「はいひょうふひょ、はんほひおふふふはは」
「……大丈夫よ、ちゃんと気をつけるから、か?」
 大河はわずかにコクコク頭を振る。
 さすがの竜児は驚きもしなかった。咥えたまま喋るな、とも言わなかった。大河とはこういう奴なのである。舌の上で竜児のふにゃちんを躍らせて、しかしお見事に歯で痛めることもなく、大河は咥えたまま喋ったのだった。
 けれど大河は竜児のその沈黙を全肯定の意味とでもとったものか、なおも、
「ひひはは、はんふぁふぁひうひうひへへ」
 咥えたまま喋りまくりである。
「わかった、俺も集中するから。もうおまえも咥えたまま喋らないでくれ……」
 ぐっ、と親指を立て、それにサムズアップで返す大河。
 まだ竜児のが小さいのもあって、大河はそれを根もとまで咥えてくれていた。大河の鼻息が、薄くはない竜児の陰毛を揺らしてくすぐる。嬉しいかといえば、嬉しいに決まっていた。フェラチオ、とかいう、言葉はあまり好きになれないその行為があることは、竜児も当然知っていたし、映像で見たことならあった。しかしそれを好きな女に、大河に、してもらおうなどとは望むべくも無かった。なにせそれが気持ちいいかどうかもわからないのである。望むどころかほとんど念頭にすら無かったのだ。
 竜児が気持ちを落ち着かせるのと、それはひきかえだった。
 大河はおもむろに、竜児のそれを舌にまっすぐ載せるようにして、口腔の天井と挟むようにして、ちゅっちゅと吸い出したのだ。
「おう!?」
 驚いた。にわかに気持ちいいのである。自分のものが漲ってくるのを竜児は感じる。
「おまえ……そんなやり方、どこで」
 問われた大河は、ちょいちょいと上の方、竜児の顔あたりを指差してくる。
「……俺?」
 竜児を指しているのだとすれば、意味がわからない。しかし大河もそれ以上はジェスチャーでは答えられないらしく、あきらめて、またちゅっちゅと。
 巧い、と言うべきなのだろうか。本格的に、よくなってくる。竜児は大河にそのことを伝えたくなる。なるのだが。
「ああ……大河……」
 溜息して、呼んで、大河の淡色の髪をやさしく撫でるのが、竜児にはせいいっぱいだった。いいよ、の一言がまだどうにも恥ずかしい。
「大河……ああ……たい、が?」
 なにやら大河がぺちぺちと竜児の胸を叩いてくる。気づけば、淡色の髪からのぞく小さな耳は毒々しいほどに真っ赤。陰毛にくすぐったかった鼻息も感じない。胸を叩く力はにわかに強まりべちべちべち!べち!と……これは。
「……タップ、か? いでえっ!?」
 べっちーん! とすごい力で胸を突き飛ばされる。ふとんへと仰向けに倒れこみながら、竜児は見た。目もとにうっすら涙を浮かべて赤鬼のように睨んでくる大河の口から、いったいその小さな顎のどこに収まっていたというのか、勃起した竜児の陰茎がずろろとばかりに吐き出されたのを。年明けてわずかふた月あまり、早くも今年度の衝撃映像ベストワンが決まった瞬間であった。
「っぷはあっ! はー……っ! じぬがどおぼっどわっ! はーっ!」
 もう何も咥えていないのに、大河の言葉は翻訳が必要なのだった。
「……死ぬかと思った、か? じゃねえっ! 無理するなと言っただろう俺おまえ……っ! ひょっとして俺、おまえの頭抑えちまってたか?」
「黙れ下郎っ! ふおお……貴様のミスではない、私のミスだっ! だが衷心はありがたく思う! はーっ!」
 握った竜児の勃起が棍棒がわり、赤鬼大将軍・大河閣下の降臨であった。
 すると竜児の胸に赫かくと残るもみじの痕は、さながら地獄行きの通行手形か。しかし竜児はその痛みも忘れて、ひたすら大河が心配でならない。赤鬼大将軍様の正体は、ただ真っ赤になってはあはあ息を切らした愛くるしい少女なのだと、竜児は知っているから。腹筋だけで起き上がり、大河を抱こうと両手をオロオロとさまよわせ、
「だ、大丈夫かほんとに、おまえもう……いだあっ!?」
 べっちーん! ともう一発、胸をはたかれ竜児はふたたび仰向けになる。左右の胸に仲良く並んだ手形は二つ、地獄にだって二度行けるんである。一度たりとも行きたくはないが。
「ふー……大丈夫だってば。気持ち良かったんでしょ? 竜児。私嬉しいの。大丈夫、続けさせて?」
 息切れと一緒に赤鬼様も去って(棍棒がわりの竜児の勃起は残っている)、そこには頬もぷにっとリンゴ色にした、いつもの上機嫌の大河がいるのだった。竜児を大きな瞳で眺めるその微笑みからは、たしかに無理からくる痛々しさのようなものは微塵も感じられないのだが。
「おう……でももう、充分じゃねえか? おまえのおかげで、ちゃんと勃……」
 そう言って起き上がろうとしかけた竜児を、片手を上げて大河が制する。さすがの竜児も胸のもみじを三つにはしたくないので、ここはひとまずと退いて、素直に寝に戻った。どうせ三度なら地獄ではなく仏の顔を拝みに行きたいではないか。
「駄目よ。竜児の勃起はまだ完全体じゃない。続けさせて。大丈夫、もう無理はしないから」
 竜児のそれを人造最強生物みたいに呼んではいるものの、大河の表情は真剣そのもの。大きな瞳に星を散らせてまっすぐ竜児を見つめてくる。これは、竜児にはお手上げの目つきであった。
「……わかった。頼むよ」
 竜児の答えを聞いて、すぐに大河は目を細め、えっへへ~♪ なんて笑いながら、さっそく竜児の勃起にちゅっとキスをくれたりなんぞする。よかったな、おまえ大河に気に入られたみたいだぞ……竜児はつい、大河に握られてキス責めされている手乗りドラゴン(たぶん第2形態)に心の声で語りかけてしまう。嫉妬はしていないとも……たぶん。
 しかし、これは。
 勃起と戯れている大河の顔を眺めていて、竜児はわかったような気がした。もちろん大河の手は特別で、その唇も特別で、触られれば格別な快感を感じるのは確かだが、わかった。これは眺めだと。この眺めが精神的に来るのである。背筋がなにやらゾクゾクとする。
 なにしろ自分の股間に顔をうずめているのは、好きな女、惚れた女、大河なのである。宝石のように煌く瞳を半ばうっとりと目蓋で隠し、優美なラインで彫られた鼻をこすりつけ、薄い花びらのような薔薇色の唇から桜色の小さな舌を一生懸命伸ばして舐め上げ、薄紅に染めた頬を可愛らしくふくらませたりすぼませたりして、せっせと頑張る大河はそれはもう美少女なのだった。くんかくんかと、竜児の陰毛に鼻をうずめて付け根の匂いを嗅いでも……、
「わあ嗅ぐなっ!」
「ん……臭いといえば臭いような……不思議と嫌いになれないような」
 気持ちとろんと微笑んだりしてちょっと変態の気があるにせよ、大河はすごい美少女なのだ。
 いやもうこの際はっきり言おう、この世で一番美しくて一番綺麗で一番可愛い娘なのだ、大河は。ちっこいけど、ちっこいから一番なのだ。ちっぱいけど、ちっぱいから一番なのだ。惚れた欲目なんじゃない。大河流に言えば、絶対絶対絶対絶対ずぅえぇええええぇ――――――っっっ!たいにっ!!そうなのだ。本当なのだ。マジなのだ。と、竜児は思う、とかは無しなのだ。
 その大河が、である。その、神の造物の奇跡、降り来たった天空の花嫁、息づく結晶となった無限の慈悲の証、真理も正義も頭を垂れるべき美の天使……もういいか? まあ、そんな可愛い可愛い大河が頬擦りしたり舐めたり咥えちゃったりしているのは、持ち主の竜児からしても、なんでおまえはそうなった、と、昔は可愛かったじゃないか、と、それが今や鬼の棍棒もそう遠くない馬色の青筋も馬並みなのね、と、お父さん僕のおちんちんはどこに行ってしまったんでしょうね、と、パパドゥユーリメンバー、と、本当にそれくらい凶悪な感じに勃起した男根、肉棒、まあそんなものなわけである。
 最愛のお姫様があろうことかおのれの股間に跪き、聖なるものであるかのように凶悪醜悪な肉棒にかしずくというこのコントラスト。この眺め、これがたまらないのだ、たぶん。主人と奴隷の反転、めまいを覚えるほどの美醜の無限の弁証法。しかも大河は小柄なお姫様で、背徳感もサイズの逆比例の二乗で増加するというもの。竜児。何をいっているのかなんだかよくわからないが、何かを考えていないといけないのだ俺は。竜児。意味はこの際、二の次だ。そうでもしてないとやばい感じがするんだ。「竜児」なんだ大河、俺を呼ぶな。俺は我慢しているんだ……!
「な、な、なんだ、大河……?」
「だから、さっきの答え。おちんちんの舐め方、竜児がえっちなキスで教えてくれたんじゃない」
「お、おう、そうか……と、ところで大河、もうそろそろ……おおぅ……っ!」
 薔薇の唇も半開き、桜色の舌をめいっぱい伸ばして、大河は竜児の肉棒を根もとから先端まで、つぅーっと舐め上げる。しかもうっとりと瞳を流し目にして、竜児の顔をうかがいながら、つつぅーっと。
「そ、それは反則だ大河っ……こっちを見ながらなんて……俺はそんなのは教えてないぞ……っ!」
 大河は小悪魔みたいにクスクス笑って、
「だって、竜児の反応見てないと、どうされるのが好きなのか知りようがないじゃない? これもあんたが教えてくれたことだけど」
 いい生徒でしょ、私……なんて微笑みながらのたまって。ああっ、また……っ! つつぅー……っ。こ、こっち見んな!
 逆だった。お姫様が奴隷のようにかしづく、のじゃなかった。どう見ても今や竜児は大河に支配されていた。やっぱりお姫様はお姫様で、下男は弄ばれるばかりなのだ。いけない、その認識はそれとして、変な喜びが湧いてきそうになって竜児は背筋がゾクゾクしてしまう。このゾクゾクが快感でないと信じたい……。
 それはともかく、思考の抽象的で清浄な天界から、肉体の具体的で淫靡な下界へと、こっち見んな大河に引きずりおろされた竜児はいきなり大ピンチなのだった。
 男の腰の奥のどこかにあるような無いような、入ったら最後の発射スイッチこそまだオンされてないが、大河はまるでそのスイッチのまわりでくるくる回って踊ってヘヘイ!な踊り子状態。いつスイッチをカチリと踏んで、あらやだ、3、2、1、爆射! 遺憾だわ殺す方向で……となってもおかしくない。言いたいことをなんとかお察し頂きたい。その時。
 察しの悪い踊り子に身をやつしたお姫様こと大河が、あーん、と大口を開けて――やばい、ここで先っぽをパクり、なんぞされたら――
「大河さま!」
 叫んだ竜児は言い間違い、下僕そのものになっていた。
「……さま?」
 パックリ寸前で大口を閉じて、大河がけげんそうに訊き返す。ひとまず助かったと竜児は思う。大河、と普通に呼びかけていたらそのままパックリの後、はひ?、とでも先っぽを口の中で転がされていたかもしれない。怪我の功名であった。
「あ、いや、なんでもねえ……っなんでもねえんじゃねえ、大河っ!」
 あっそ、と、やり直しとばかりあーんと大口を開けた大河をあわてて呼び止める。
「なによ」
「いや、もう、本当にいいんじゃないか? もう……そうだ、完全体! 完全体になったぞ俺は、大河!」
「えーっ。ほんとう?」
「本当だ、だからもうゴムを、をををおまえそれやばいいいい……っっっ!」
「だってこうしてないと維持できないじゃん、完全体」
 そう言って大河は、小さな手で握り具合も絶妙に、竜児のをゆっくりしごきあげる。このわずかな時間でさまざまなノウハウを開発、吸収して、完全体へと近づいているのはむしろ大河の方なんじゃないのかと竜児は思う。面白くなって来たところなのに……なんて、唇を蕾に尖らせて、末恐ろしいことまで、進化する大河さまはおっしゃる。
「いやだから……これ以上はもう、本当に、やばいんだって。完全体どころじゃなくて……」
 そこまで言ったところで、あの言葉を口にしたものかと、竜児の舌は重くなるのだったが、
「わかった! 竜児イキそうなのね? 射精しそうなのね!?」
 大河はいきなり察しもよく、その言葉を迷い無しに言い切って、ぱあっと笑顔の花を咲かせる。よりにもよって大河、本日一番の笑顔であった。しかも、はしゃぐついでに竜児のを、りゅんりゅんとしごくのだからたまらない。
「そ、そうだよ……だからやばいやばいやばいっ! だからもう止めよう、ゴムつけよう……っ!」
「えーっ。私見たいなー竜児のイクとこ。竜児の射精。見たーい見たーい私見たーい。ううん、見たいのは私だけじゃない。きっと誰もが見たがるはずよ。真のヒロインになるチャンス!」
 なんて一気にたたみかけて来る大河の言うことは、さっきの竜児の思考をも越える意味不明ぶりだった。
「射精したらそれはヒロインじゃねえだろ……とにかく、な? ひとまず止めにしようぜ。後でいくらでも見せてやるから……」
「えー、ほんとう? 後っていつ? 何時何分何秒? ていうか一回くらいいいじゃないよ、ねぇ? 竜児、あんたってさあ、ときどきずるいよね……私のはいっぱい見たくせに。ケチよねケチケチケチケチドケチ」
 痛いところを大河は突いてきた。たしかに大河はイクところを竜児に見られまくっていた。それからすると不公平なのは明らかだった。だがその不公平をここはなんとしても通したい竜児である。そこでなんとか論理のアクロバットを探すのだが、大河の手にりゅんりゅんされている刺激もあいまって、竜児の考えはなかなか焦点を結ばない。
 そうして黙ってしまった竜児を見て、長考は許さないということか、たんにしびれを切らしたのか、大河がふたたび口を使うべく、あーん、と……!
 窮地のさなかに開かれた、その大河の口の中を、竜児が見た時だった。
「待て大河! 最初はおまえの中で射精したい。おまえの中でイキたいんだよ!」
 大河は動きをとめて、きょとんと。
「最初は、私の、中で……?」
「そうだ。最初は、おまえの、中で」
 大河の大きな瞳を覗き込んで、竜児は慎重に言葉を区切って繰り返す。通じるか、はたして――
 大河の頬に朱が散る。瞳を開けているのも辛そうに目蓋をふるわせて、薔薇色の唇は小波に結んで何かを耐えるよう。
 通じた! 竜児は心で快哉を上げる。これは大河がほだされた時の表情、無意識に胸を片手で押さえるのはときめきの証。よつんばいになっていた大河は小さな尻すら跳ねさせて、
「ひゃっ! な、なんで……? 竜児を責めてる時は、平気だったのに……っ!」
 ふるふると震えだし、跳ねる尻を抑えられなくて困りだす。
「く、くやしいけど……わ、私も限界、だったみたい……こ、興奮、してたみたい……っ」
 竜児にしてみれば、してやったり、なのである。優しい声を作ってみせるも、魔界の欲情大浴場の番台に座っている若手ナンバーワン詐欺師のように凶眼がギラついているのは、今ここにおいては誤解だとはとても言えない。
「そうか……嬉しいよ、大河。さ、早くゴムをつけさせ」
「待って!」
 きっ、と大河は、驚くべき気丈さでもって竜児を睨みつけて言う。
「私にさせて。ゴムつけるの私にさせて」
「お、おう、そりゃかまわないが。おまえそんな状態じゃ……」
「大丈夫」
 そう断言して、震える大河はぎゅっと目を閉じる。竜児のモノもぎゅっと握り直す。
「おう……っ」
 漏れてしまった竜児の声は快感のものか感嘆のものか。どちらともつかぬ早さで大河の震えがぴたりと止まった。人体の不思議を目の当たりにして竜児は驚く。大河の瞳がすうっと開き、
「……ね!」
 竜児を見つけて確かな輝きを宿す。かっこいい、とすら竜児は思ってしまった。
「おう……すげえな、おまえ」
「まあ、そういうものだということよ。さ、竜児、袋を切って、ゴムを載せて。後は私がやる」
「お、おう」
 進化の止まらぬ大河の得た、新しい悟りの中身も気にはなったが、とりあえず竜児は言われるまま、ゴムを取り出し、精子袋をねじって勃起の先端にかぶせる。ここからが難しい……
「オッケー。後はまかせて」
 神技、であった。
 大河はまず空いた片手で筒を作って、上から下へするりと輪になったゴムを落とす。そのまま根もとを握っていた手とスイッチして空けた手でまた上からするり。その手をスイッチしてまたするり。するりするりと五回こすって、最後に始めに握っていた手を戻して、完成。
「おおう……っ!」
 竜児の勃起は薄いゴムに見事に包まれていた。罵倒と暴力と身だしなみのほかに、コンドーム着けが新たに大河の得意技に加わった瞬間であった。
「おおおおおう……っっっ!」
 感嘆するほかない。パチ、パチ、パチパチパチ……やがて竜児は拍手さえしていた。
「どう?」
 得意気に顎をしゃくった大河は、どうだ見たかと言わんばかりの表情で竜児を眺める。
「……すげえ」
「すごい?」
「すげえ! すげえなおまえ! なんだ、なんなんだどうやった!?」
「先にあんたのトライを見てたからね、きっとこうかなって。でなきゃ無理だったかも」
 なんと竜児のフォローまで忘れない、冴えまくりの大河は、
「惚れた?」
「おう、惚れた! 惚れ直した!」
 ふにゃんと目を細めて微笑む。そして大河はなぜか頭を垂れてつむじを竜児に向けてくる。
「……どうした、大河?」
「撫でて」
「お、おう!」
 竜児は慌てて、だけど優しく、淡色の髪に包まれた大河の頭を撫でてやる。
「もっと。いいこいいこして」
「おう、よーしよし。いいこだ、いいこだなー、大河は」
 竜児は犬か猫にするように両手で撫でてやる。大河も髪が乱れるのも気にせず竜児の両手にぐりぐりと頭を押しつけてくる。ほどなくふたりは、
「よーしよしよしよしよし、かーわいいですねー、可愛い虎ですねー……」
「うー……ぐるぐるぐる……」
 ムツゴロウと、あやされてのどを鳴らす虎になり果てていた。
 やがてようやく満足したのか、顔を上げた大河は満面の笑み。それを迎えた竜児も、絶対にスキは見せない、俺はおまえの上位の獣なのだ、従え! と、無法な地下サーカスの若手ナンバーワン調教師の鋭い眼で見つめ返す。微笑んでいるのだ。
 もう頼むことも頼まれることも要らない。
 竜児はくしゃくしゃになった大河の淡色の髪に何度も指を入れて、丁寧に梳きおろしてやる。大河はその間、瞳を閉じて髪を竜児にゆだねる。充分に梳いて、竜児は大河の頭にぽんと手を下ろして仕上がりを伝える。
「よし、いいぞ」
 長い睫毛に縁取られた目蓋を開けて、星振る瞳で竜児を見つけた大河は微笑む。
 瞳が語って言葉は要らない。どちらともなくお互いに顔を寄せて、口づけを交わす。二度、三度、唇をついばみあうけれど、それ以上、深いキスはしない。それでよかった。
 唇を離して、見つめあう。閉じそうになる目蓋を必死で支える。頬に薄紅が差す。高鳴る心臓。きっと。
 あんたも。
 おまえも。
 そしてもう、言葉は、
「して、竜児」
「しよう、大河」
 それだけで、いい。


(この章おわり、13章につづく)
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