15
つながってから、これがもう何度目だろうか。
「りゅ、竜児……っ! またっ! またっ!」
竜児の方を向こうと必死で細く白い首をのけぞらせ、大きな瞳を困ったように眇めて星を縮めて、大河が絶頂する。
また、という大河の言葉が、とても可愛いと竜児は感じる。
またイクの、という意味の、竜児に報告してくれるその言葉が愛しい。
座るように上体を起こした竜児の眼下で、ミルクのように白く、驚くほどに滑らかな大河の裸体が、絶頂の痙攣に何度も貫かれる。
跳ねる大河のちいさく丸い尻には、竜児の股間が縫いつけられている。
絶頂によって、大河の尻は何度も跳ねる。大河の穴は何度もきつく締め付けてくる。
精液搾取の反射。
驚くほどの刺激が、竜児の勃起にもたらされる。
だが喘いでも、竜児はそれでは射精しない。
射精していないのだ。
まだ、竜児は一度も。
* * *
つながってからの、最初の大河の絶頂。
月の影を照り返しながら。
喘ぎ、震え、跳ねて、匂いと汗を空に散らす。
竜児の腕の下。
滑らかな腹筋を硬く引き締め、ちいさな乳を揺らして丸くなり。次にはのけぞり、背中と腰を橋のようにして美しい弧を描く。
見開かれた瞳は宝石のように光を吸い込み、星ぼしのきらめきに変えて散らす。
瞳は目の前にいる竜児に向けられても、揺れて見ることもおぼつかない。
薔薇色の唇を大きく開くことさえできず、桜色に艶めく舌をひかえさせて子犬のように喘ぐ。
絶頂するまではきつく竜児の腕をつかんでいた指も、今はおののいて硬くなり添えられているだけ。
大河の身体をただ痙攣だけが支配していた。
絶頂に何度も貫かれる大河のちいさな裸身。
ちいさくても、それはたんなる美を越えた崇高なもののように竜児を畏怖させる。
白く濡れた、稲妻のようであった。
熱く滑らかな、怒涛のようであった。
竜児の腕にすっぽりと収まるほどの、ちいさな自然が見せる驚くべき仕草。
稲妻であり、怒涛であり、そして。
可愛くて。可愛くて。可愛くて。
なんと、なんと、なんと可愛いのだろう。
竜児は涙を流す。
愛しい大河を苛む激しい快感を想ってしまう。
大河の快感が竜児の身体に流れ込んでくる。
それは狂おしいほどに甘く優しいものとなって、竜児の胸をいっぱいにする。
竜児は涙すら流す。
おうおうと呻いて、嗚咽する。
大河に夢中になる。
大河の尻は竜児を深く求めて何度も跳ねる。大河の穴は竜児を何度もきつく締めつける。
精液搾取の反射。
これほどとは。
股間を波のように襲う刺激に、震える顎をだらしなく落として、喘ぎながら竜児は思う。
大河の精液搾取の反射を、竜児は最初に指で経験したのだった。
大河の穴を拡げるその指を、絶頂に何度も締めつけられながら、俺はこのいやらしい穴に挿入するのだと、その時の竜児は期待に勃起が漲るのを禁じえなかった。
今やその、精液搾取の反射に襲われた大河の中に、竜児は勃起そのものを深く深く根もとまで埋めているのだ。
大河が上げる甘い声を燃料として激しく漲っていく勃起が、大河を喘がせる絶頂の反射によって何度も何度もきつく締め上げられる。
これほどとは――
絶頂する前に伝えたいことがあるのだと、哀願する大河の可愛らしさによって、竜児が心を取り戻していなければ。もしそうでなく、竜児もまた高まっていたとしたら。
耐えきれず、確実に射精したに違いなかった。
それを耐えたのも、また竜児の欲だった。
まだ果てたくないのだ。
竜児は大河とのつながりに魅了されていた。
もっと長く、それを感じていたいのだった。
大河を感じさせ、何度でも絶頂させて。
可愛い、可愛いと、何度でも涙を流したくてたまらない。
長い睫毛にふちどられた目蓋をきつく閉じて、甘い涙を滲ませながら、いまだ絶頂の余韻に震える大河に、竜児は決意して語りかける。
「大河」
「りゅ、竜児……」
瞳を開いて竜児を見つけて、大河は嬉しいと、ひとつ、安心したように微笑んでみせてから、
「ご、ごめんなさい……」
なんとびっくり、泣きそうな顔をして謝ってきた。
「おう!? な、なんで謝るんだ?」
「だ、だって、私ひとりで、イっちゃったんだもん……」
竜児、まだでしょ……? なんて、眉根までひそめて、大河は本当にすまなそうに言う。
竜児はつい、優しい笑いを鼻から漏らしてしまう。
「なんだよ。気にすんな。おまえがすぐイっちゃう、えっちな子だってのは折り込み済みだ」
「えぇっ……ひど……」
謝っていたというのに、すぐに大河は唇を蕾に尖がらせる。
そんな大河の拗ねた顔が、またたまらなく愛しくて。
竜児は声を甘く低く落として、狙う。
「大河はすぐイっちゃう子だもんな? いっぱいイっちゃう、えっちな子だもんな……?」
好きだよと言い落とす、同じ声音で言う。
「はっ……はう……っ」
狙われてしまった通りにへその下をずきずきと疼かせて、大河は甘く吐息してしまう。
「ほら、すぐにそんなふうに感じて。えっちな子だな、大河は……」
ようは、不意にいじめたくなったのだった。
竜児は大河をいじめて可愛がりたくなったのだ。
ふだんの大河が相手なら、それはまさしく虎をも恐れぬ所業であったが。
「あっ、あうぅっ……ひ、ひどい……りゅ、竜児がいけないんだもん。わ、私、えっちな子じゃなかったもん……あっ!」
大河は涙目になって抗議するけれど、まさにいやらしく竜児の勃起を甘く締めつけて。跳ね返る快感に甘い声すら上げてしまう。
「ほら、すぐそうやって、俺のから精液搾り取ろうとする」
「そ、そんな……っ! っ! か、勝手になるの! あっ! あっ!」
「そんなえっちな声出して、俺の、おっきくしようとしやがって」
「し、してないもん! 声だって、か、勝手に出るの! うぅ、りゅ、竜児の意地悪っ!」
言い募って、震えながら涙目。竜児の子虎は唇もへの字にして睨んでくる。
愛しくてたまらなくなって、竜児の方が根負けしてしまう。
意地悪は終わりだった。
「おまえ、えっちで、可愛くて。俺はたまらないんだよ、大河」
竜児は顔を寄せ、結んだ桃薔薇の唇を唇でついばむ。
つんと蕾にしていた大河の唇は、それだけですぐにほころんでしまう。
「りゅ、竜児……」
「おまえの感じるのを、見たくてたまらないんだ」
言って、もう一度キス。
「おまえのイクところを、見たくてたまらないんだよ」
その言葉を言われるとあまりにきつく疼いて、大河は震えて、瞳を眇めるようにして喘いでしまう。
それでもすぐに、伝えたいと、
「りゅ、竜児……わ、私も、ね? 私も、竜児の感じるの、見たいの……」
疼きに耐えて一生懸命、切れぎれに大河は言うのだ。
「わ、私も、竜児のイクところ、見たい……」
これは思いもよらぬ逆襲で。
竜児は不意にときめいて、のぼせた血が耳や目蓋まで熱くするのを感じてしまう。湧いた生唾を飲み下す。
竜児とは違って、大河はちいさく、華奢で、美しく、可憐で、可愛くて。だから。
どうしても、つい忘れてしまうのだった。
竜児が大河の身体を求めているように、大河もまた、竜児の身体を求めてくれていることを。
しかし、大河におのれの絶頂を晒すとは、想うだけでもなんと恥ずかしいのか。
大河に口で愛されてもなお、射精を拒んだおのれの気持ちは、きっとこれだったのだと竜児は気づく。
俺はやはり、美しくもなんともないというのに。
もし竜児がそう言えば、大河は違うと言うだろう。怒ってくれさえ、するだろう。けれど。
今や大河こそがおのれを越えた真実と、わかっていてもなお、俺は――
「竜児……?」
大河に、呼ばれて。
大河に竜児と呼ばれるようになってから、俺は自分の名前が本当に好きになったのだと、不意に竜児は思い出す。
竜児。この、きっと父の臭いをまとわせられた名前。
求めるにも憎むにも遠くて。他人のようにぼんやりとしか思うことの出来ない、血の父。
うすうすと気づいて、竜児はおのれの名前に対してもぼんやりとした愛着を持つばかりだった。
悪くはない。だけど……悪くはない、とでもいうように。
大河が変えたのだった。
竜児、竜児、竜児、と。
なんか他にもひでえ呼ばれ方もされまくったけれど、とにかく、大河が。
竜児、竜児、竜児、と。
ちいさな身体に見合わぬ、少し大人びた低い成分をもった、けれどとても可愛い、あの声で。
「大河……もう一度、俺の名前を呼んでくれ」
「えっ? りゅ、竜児……?」
そう、この、声で。
まんざらではなくなった。やがてはっきりと好きになっていた。俺の名前。
俺は、竜児。
高須竜児。
そういえば、大河もそんなようなことを言っていた――
「大河、俺はおまえの名前が好きだよ」
「えっ? あっ、なに? 私の……あ、ありがと」
あまりに唐突で、さすがにきょとんと目を丸くして、でも大河は嬉しそう。そして、
「あっ! わ、私も……竜児の名前、好きだよ……大好き」
上目遣いに頬も染めて、またも大河はすぐにお返ししたがるのだった。
ここにもなにか魔法の力があるのだと、竜児は思う。
愛するものに照り返されて、おのれへの愛にも目覚めるとでもいうような、魔法の力が。
おのれの名前がそうであるならば、また――
「大河、俺のイクところ、見せてやるからな」
「っ! りゅ、竜児……っ」
「大河、俺はおまえの中で射精して……射精したい。射精する。そして、俺はおまえにイクところを見せる」
「は、はい……っ!」
大河はまた、柄にもない素直な返事をして。嬉しくて。たまらなくて。ずきずきと。震えて。吐息する。
竜児は、大河の震えて喘ぐ薔薇色の唇を、薄い唇でまたひとつ、ついばんで、
「動くよ、大河」
宣言する。
うん、と、大河はうなずく。
またもやいつのまにか、ふたりで到達していた深い結合で、大河が痛まないことは確認していた。
竜児は、ゆっくりとおのれの意志によって慣れない腰を使い始める。
「はあっ!」
深いところから引き抜かれて、大河がひときわ甘く吐息する。それだけで竜児は漲ってしまう。けれど。
腰を使うというのも、またどうにもよくわからないのだった。
大河の穴はきつすぎるほどで、ともすれば竜児の勃起を押し出しかねないと感じる。
激しく腰を使うなどというのは、まだ竜児自身にとっても無理だと思われた。
だから慣れるまで。とりあえず、慎重に。
先に指で探った時と同じように、大河が悦ぶやり方を見つけ出そうとする。
指で押すと大河が悦んだ場所を刺激するために、探りながら浅い注挿を繰り返す。
「あっ! あっ! りゅ、りゅうじ、そ、それ、好き! 好きっ! い、いい、いいの……っ!」
快感に襲われて甘く応えるだけでなく、恥ずかしさを越えてとうとう素直に報告してきた大河のあまりの可愛らしさに驚きながら、竜児は漲りを増した勃起を使う。
何度も浅く注挿しながら、竜児はときどき、おのれが我慢できなくなって、大河の中に深く勃起を押し込んでしまう。根もとまで、ぴっちりと埋める。思わずため息するほど、大河の穴は良かった。
大河は深くされるのも好きなのだった。
「あぁっ!」
悦んで、勃起をぎゅうぎゅうと可愛らしく締めつけて、大河は登ってきた竜児の背中にしがみついてくる。たまらなかった。
「可愛いよ、大河」
「りゅ、りゅうじ……っ」
瞳の星もとろけさせ、頬も桃色に染めて、大河は竜児を見つめ返してくる。
愛しさをこめて、薔薇の唇をついばんでやる。
そして、竜児はふたたび勃起の先端が浅くなるまで、腰を引く。そして浅い注挿を何度も重ねてやる。
慣れるまでと、とりあえずは、その繰り返し。
幾度めかの深い挿入の時だった。
見つめ合っている、時だった。
「あ、あのね、竜児……ま、まだ、イかないの……?」
そんなふうに、大河は竜児に訊いてくる。すぐに、大河は薔薇の唇を小波にきゅっと結ぶ。ふっ、ふっ、と鼻息を漏らして、小刻みに震える。
なにかに耐えるように。
だから、竜児にはすぐにわかった。
「大河、おまえ……」
それだけで、大河にも伝わった。コクンとうなずいて、
「ご、ごめんなさい、竜児……わ、私、だ、だめ……ま、またイクの、また…………い、イって、いい?」
大河はなんと、許可を求めてきたのだった。
竜児は心底びっくりした。あんまりに大河は可愛すぎた。
こいつはどこまで俺のものになりたいという。
驚きに目を見開いたまま絶句した竜児を、許可しないとでもとったのか、何かこらえるようにして、少し不安げな瞳の色で大河は見上げてくる。
「おう……いいよ、イっちゃえ」
「わ、わぁい……んじゃ、ちょっと、お先に……っ!」
そんな、おバカなことを言って。
ありがと、嬉しいな、と、大河はお礼をするように目を細めてから絶頂の痙攣に身をまかせる。
竜児が深く刺さるように恥丘を突き上げ、竜児を何度もきつく締めつけてくる、精液搾取の反射。
もう絶頂しているのに、さらに刺激される身体。
大河にはそれを拒めない。
「はうっ! はうっ!」
少しずつ、おしっこを吹く。竜児の股間をも熱く濡らす。
大河にはそれを拒めない。
股間の刺激よりも強烈に、五感から脳へと流れ込むその様のすべてが可愛くて、可愛くて、竜児を痺れさせる。
背筋がゾクゾクとする。
駄目なのだった。がまんができそうにない。
もっと見たくて、たまらないのだ。
大河がどうなってしまうのか、もっと見たい。
もっと、知りたい。
竜児は大河の絶頂とともに止めていた腰を使って、精液搾取の反射に襲われている大河の穴に注挿を始める。
「んあっ!」
大河はすぐに反応する。
反射で締まってきつく狭くなったところを狙うようにして、勃起をぬるっとこじ入れる。
「あっ! う、そっ! そん、なっ! りゅ、りゅ、じ……っ!」
痙攣すら越えて、大河は瞳を大きく見開き、驚きの声もひときわ甘く、
「わ、私っ! イってるの! い、イってる、のに、そんなっ! やっ! やぁん! ひ、ひど……っ!」
ひどい、ひどい、と切れぎれに竜児に言い募る。
すごかった。
大河の反応も、大河の穴の感触も、すごい。
竜児は眉もしかめて歯を食いしばって苦しいほどの快感に耐える。
耐える隙間を見つけて、訊ねる。
「痛いか? 大河……」
「いた、痛く、ないの、おーっ! き、きつい、の! りゅう、じ、お、ちんちん、きつ、い……っ!」
大河に性器を呼ばれて、竜児は驚くほど漲らせてしまう。
「やん! やん! も、もう……っ! ぐ、ぐって、したら、やあっ! お、おかしく、なる……っ!」
それなのに、大河の身体は恥丘を何度も突き上げて、竜児を深く欲しがってくるのだ。
俺の女はなんて可愛い動物なのだろうと、竜児の頬を涙がつたった、その時。
勃起の裏側にあたる、何かがあることに竜児ははっきりと気づく。
少し腰の位置を変えて、探るように突き入れる。
勃起の先端の裏あたりで、その、大河の中にしては不思議と硬い何かをつつく。
「あっ!?」
はっきりと驚いた成分のある声を大河が上げる。
その硬いものは、なにかまるで、大河の中に備わったビー球のよう。
「大河……これ、なんだ?」
勃起でつつくようにして、訊ねる。
「あう! あう!」
「なあ、これ……ここも、気持ちいいのか?」
「う、うん! そこ、おっ! お、奥! わ、わかんない、けど、き、きっと、たぶん」
し、子宮かも……と、大河は、どこか恥ずかしそうに言う。
「こ、これが……!」
言って、竜児は絶句してしまう。
神秘の多い夜ではあった。けれど。
これは神秘の神秘。
こんなところにあるものなのか。
こうして、それに触れることがあるものなのか。
触れてよいものなのか。
畏怖の念が湧き起こる。ほとんど感動すら、竜児はしていた。
われ知らず、けれどすべてを知って、竜児は言っていた。
「大河、大河……きっとこれに射精してやるからな、大河。結婚して、おまえを養えるようになって、そうしたら……俺は、きっと、これに射精するからな、大河……」
つまり、それは。
それが意味するところは。
大河は嬉しかった。
そんなことまでも嬉しいのだった。
このひとだからそうなのだった。
竜児だから。
ただ竜児だけに、大河は。
嬉しくて、とろけそう。
だから、ただただ微笑んで、
「うんっ、うんっ……してね? してね、竜児……っ」
と、だけ言う。
大河が微笑めば、竜児もまた微笑むのだった。
なぜそうなのか大河は知っているのだろうか。
大河の微笑みは、それ自体が竜児の喜びだから、竜児は微笑むのだ。
そして、大河の肯定の返事はそれ以上の喜びとなってあふれかえり、竜児の胸をいっぱいにする。
けれど今は、これだけと、
「じゃあ、いくよ、大河」
「う、うん……っ」
言って、大河の可愛い応えを得て、竜児はふたたび腰を使い出す。
今までに得たコツと勘にすがって、徐々に注挿の速度を上げる。
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
必死で甘く応える大河の声が、速度を上げた注挿と同期する。
それもまた可愛いのだった。
竜児は高まっていく。
竜児はやがて激しく腰をふりたくる。
大河の身体を信じて、遠慮なく貫きまくる。
大河の胸の上で、ちいさな乳が薄いプリンのように揺れる。
「っ! っ! ! ! ……!!」
喘ぎ声すら追いつかず、大河は目蓋をきつく結んで、ただただ唇からちいさな桜色の舌を出したまま震えるばかり。
なにもかも可愛い。
竜児は高まる。
おのれも息を詰め、歯を食いしばって汗を散らす。
「し、死んじゃう! 死んじゃう!」
かつて知らないほど高められてしまった大河が叫ぶ。
「イって! りゅうじっ! イって!」
必死で懇願してくる。
果てることで応えようと、竜児は目すらつぶって、獣のように尻をふりたくった。
ひたすらに、ひたすらに、ふりたくった。
けれど。
竜児は不意に、その動きを止めてしまう。
驚いたように双眸をかっと見開き、大河の向こうの畳を見やる。だが畳など見ていないのだ。
息を詰めていた分、ただただ激しく喘ぐ。
射精はしていない。
先に竜児の体力の限界が来たのだった。疲れ果てた。いささか情けなかった。
一方、大河はといえば、動きを止められるのも駄目なのだった。
「あ……っ! りゅ、じ、ご、ごめ、なさい、ま、またっ!」
切れぎれに詫びて、絶頂してしまう。
白く激しく美しい、大河の絶頂を眺めて。感じて。
喘ぎながら竜児は涙を流す。
涙しながら、竜児は気づいたのだった。
おのれが大河の絶頂にも、精液搾取の反射にも、射精しなかったのは、耐えていたせいではなかったらしいということに。
初めて体験するつながりによって、大河の身体によって、知らぬところまでおそろしいほどに高められているのは感じていても、なお、竜児は。
どうやら俺は、たんに射精できないのかもしれない――
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